れっといっとびぃ8

一糸纏わぬ裸になったあたしの白い肌をでっぷりと太った手が撫でまわしている。目の前にはこのギルドの幹部の一人であるゴルドがいた。白髪頭のデブ。よくこんなのが盗賊ギルドの幹部をつとめてられるわねというほど鈍重そうな男。ただ、狡猾さだけは人一倍ありそうな感じはする。だが、この男に会ったことであたしの疑惑は確信に変わろうとしていた。それはおいおい解明するとして。
後ろにはもう一人の幹部のピウスというやっぱりでっぷりとした男がいて、あたしの体にロープをかけていた。どうやらそういうのが趣味らしい。あたしの手を後ろ手に縛り上げ、いくつもの結び目を作りながら乳房を押し出すようにして胸を縛り上げていく。さすが盗賊。ロープはちょっとやそっとじゃ解けないような縛り方になっていた。まあ、いざとなったら抜け出す手段はいくらでもあるんだけどね。とりあえずここはおとなしく縛られておく。
正直、拘束されることで少し疼いてきてたりもして。
あれからあたしは、裏からカジノを出て、盗賊ギルドの幹部であるこの二人に面通しをした。
たいていの町にある娼婦宿やカジノは盗賊ギルドの資金源であることがほとんどだからだ。それに、この町であの依頼を受けるに当たって、あたしはどうしても盗賊ギルドの内情を知る必要があった。
「レイアちゃんは娼婦の才能もあるんだなあ?ん?」
あたしはここに来てすぐ、自分の盗賊としての腕前を見せてある。ピウスの胸から財布をすって見せたのだ。・・とは言え。駆け出しでもすれそうなほど隙だらけなんだけどね・・。そのときに名乗ったのが自分の通り名、レイアだったりする。
やわやわとあたしの胸を捏ねながらねっとりとゴルドの舌があたしの耳たぶから首筋を這い、臭い唇があたしの唇をふさいだ。
うげ・・。にんにく食べたな・・?
そうは思ってももちろん顔には出さない。
「才能なんてないけどぉ・・。気持ちいいことは好き・・。」
「へへへ・・・じゃあ気持ちよくしてやろうなあ・・?」
そう。例え気に入らない男相手にでも感じる。たとえばそれが親の敵だとしても。あたしの体はそういう風に仕込まれていた。
「ぁ・・あ・・・。」
あたしの乳房を後ろからピウスが揉みあげる。時折乳首を摘んではこりこりと捏ね、硬くなるそれをさらに硬く立ち上がらせている。前では動けないあたしの足を思い切り開かせてゴルドが犬か何かのように股間を舐めている。
ぴちゃぴちゃ・・ずる・・・じゅるる・・ちゅう・・・ぐちゃ・・
「ふ・・ぁん・・・ああ・・。」
執拗な舌での愛撫にあたしのそこはぐちゃぐちゃに濡れてしまっていた。後から後から溢れる愛液をゴルドは喜んで啜り、飲んでいく。襞の間をこそぐように舐められ、腰が震えて背中が反る。クリトリスを唇にはまれて舌で転がされれば半開きの唇からとめどない喘ぎがもれた。
「あ・・・ああ・・いい・・そこ・・いいのぉ・・・。ん・・んむぅ・・。」
後ろからピウスに唇を塞がれてあたしはうめいた。
ちゅ・・ちゅる・・・じゅる・・れる・・・・ちゅ・・・・じゅぷ・・ぬぷ・・・
クリトリスを吸われて跳ねる腰をゴルドは腕力で押さえつける。そうしながらあたしの膣に指を2本突っ込んでぐちゃぐちゃと中をかき回し始めた。
「へへ・・ずいぶん感度がいいなあ・・。こういうのはどうだ?」
ピウスの指があたしの乳首を押しつぶすように捏ねる。
「ん・・んんぁああっ!!」
痛みのうちにもじんとする痺れにも似た快楽が押し寄せてあたしの乳首はびんびんに硬くなる。
「うほ・・こりゃもうたまらん。」
あたしの反応に触発されてか慌しくピウスは自分のズボンの前を寛げて肉に埋もれるようにぴょこんと立つ男根を出してあたしの口に突っ込んだ。その下では相変わらずゴルドがあたしの股間をべちゃべちゃと舐め啜っている。
「ん・・んぶ・・んぶぅ・・・れろ・・・ん・・。」
汚い男根を舌を使ってしごきながら頭を前後に動かす。短いそれは余り頭を動かすと口から外れそうになるので小刻みに頭を振りながら舌を絡め、やわやわと歯で擦りながら吸い立てる。
あたしがピウスのものを口で奉仕する姿に興奮したのかゴルドの舌がなおも激しく動く。
「ん・・んぅ・・・じゅぶ・・・ん・・・。」
指でぐりぐりと中の襞を擦りたてながらあたしのクリトリスをむき上げてちゅうちゅう吸ってはぺろぺろと舐める。そのタイミングが絶妙で、もういく・・と思ったら微妙に力を抜いたりするのだ。
「う・・わし・・もういく・・。」
頭の上にピウスがうめく。あたしはますます勢いをつけて男根を舐めまわした。ちゅうっと吸うとびくびくと男根が震えて先走りの液が口の中に溢れ出した。
「お・・お・・・もういくぞぉおおっ!」
象のような唸り声を上げてピウスがあたしの口の中に白濁を吐き出した。青臭いそれを無感動に飲み下すとゴルドが性急にあたしをうつ伏せに引き倒した。後ろ手に縛られているので顔は床に押し付けられる。お尻を突き出したような淫靡な格好のままあたしは後ろからゴルドの太い男根に貫かれた。
「あ・・・あぅううっ!」
「おお!すごい!締めつける!!」
あたしのうめき声にゴルドの咆哮が重なった。獣のように吼えながらゴルドはすごい勢いであたしの襞をめちゃくちゃに突き込んでくる。ゴルドの男根があたしの愛液をかき混ぜるぐちゃぐちゃという音が部屋に響き渡る。
「あ・・ああ・・ああん・・・ああっ」
上半身が引き起こされたかと思うと再びピウスのものがあたしの口の中に入ってくる。口と膣を犯されながらあたしはぼろくずのように揺さぶられていた。
「おおおうっいくっ!」
「俺もまたいくぞぉおおっ!」
ぴゅ・・ぴゅぴゅっ・・・どぷっ・・・
・・・・どーでもいーけど・・・うるさいやつら・・・・

「・・・・・ふぅ・・・。」
何回目か忘れたほどついたため息をまたついて俺はベッドから起き上がった。
すでに真夜中はとうの昔に過ぎた。だが、ラリサが戻ってくる気配はない。
・・・・気にすることもないはずなんだが。
ラリサがどこに行ったかは大方見当はついていた。
ギルドで得られる情報には限度がある。情報を得るのに最適な場所。それは盗賊ギルドだ。
盗賊ギルドにはただでいけるというものでもない。組員になって上納金を納める必要があり、それなりの情報料も支払わなきゃならない。その代わり、こっちが情報をもっていても高値で売れたりもするんだが。
ラリサは自分の裏の生業を利用して盗賊ギルドに行ったに違いなかった。
・・・・だからって待ってるだけじゃ能がねえよな。
俺はベッドを降りると武器と鎧を身に着け、宿屋を出た。目指すは歓楽街。
男には男の情報の得方がある。当てもあるしな。
人通りもまばらな通りを歩いているとリュートの音色がかすかに聞こえてきた。探していたその音色に俺は薄く笑みを浮かべる。
相手はすくに見つかった。
「あら、お兄さん。あたしに乗り換える気になった?」
「まあ、考え中だけどな。」
楽器を爪弾く指を止め、俺の胸元を弄るイスターシャの腰を抱く。そこは、売春宿のまん前だった。
「中に・・どぉ・・?」
淫靡な笑みを浮かべる唇を軽く人差し指でなぞると俺はイスターシャの耳もとに口付けた。
「いいぜ・・?いくら払えばいい?」
女は俺を中に導きながらくすりと笑う。
「そうね・・。あたしをいかせられたらいらないわ。いかせられなかったらあたしを1000ガルドで水揚げしてね・・?」
「そりゃありがたい。ただでこんな美女とやれるとはね。」
喉を震わせて笑うと、俺はしなやかに歩く女の後を追った。
俺が通されたのは安っぽい個室だった。
「じゃあ・・さっそく・・きゃっ・・。」
俺の鎧に手をかけようとする女の両手を片手で一まとめにして後ろに拘束すると、俺はスリットの入ったスカートの隙間から女の太腿をなでまわした。
「ぁん・・それじゃあなたを・・気持ちよくさせられないわ・・?」
色っぽく抗議する女を無視して俺は薄い服の上から女の胸を揉み、乳首を押すように捏ねまわす。
「あ・・あ・・そんな・・やん・・。」
案外にかわいらしい悲鳴をあげながら息を荒げていく女の耳もとに唇を寄せて俺は尋問を開始した。
「・・・・・あの依頼を受けた連中について・・・お前さんが知ってることを教えろよ・・。」
「ぁん・・・何のこと・・・ひぃっ」
女の乳首を乱暴につねると女の体が跳ね上がる。俺はその反応を楽しみながらわざと酷薄な笑みを浮かべて見せた。
「あんなとこにリュート弾きがいて・・それなりの情報持ってるなんざどっかの内偵としか思えないのさ・・。俺に言わせりゃな・・。」
「そ・・んな・・。言いがかりよ・・・うぐぅっ・・!」
ぎゅっと女の乳首をつねった後、じんわり、やわやわと優しくこねてやる。女の頬が紅潮し、その息が荒くなる。
「言えば楽にいかせてやるぜ・・?」
「ひ・・やめ・・・。何のことだか・・わからな・・・ぁん・・・。」
「ほう・・そうかい。じゃあわかるようにしてやろうか。」
俺は乳首をいじっていた手を下ろしてスリットの隙間からスカートの下にもぐりこませた。さわさわと茂みを撫でると女の目がとろんとし始める。だが、ただ感じさせてやるつもりはない。
くちゅ・・。
「なんだ、もう濡れてんのかよ。淫乱だなぁ?」
「あん・・だって・・・。」
ぬるぬるにぬかるんだそこをくちゅくちゅといじってやると女の半開きの唇から甘ったるい喘ぎ声が漏れる。
その様はなかなかに色っぽくて普通ならそのまま突っ込みたくなるような状況だ。にもかかわらず、なぜか俺はどこかざらついた感覚に晒されていらいらしていた。
性質の悪い拷問でもしているような・・いや、違う。望まない何かをしているような・・。
俺はそんな感覚を振り払おうとしながら女のクリトリスをきゅっと摘んだ。
「あ・・あああっ!」
女が腰を震わせながら仰け反る。だが、ここでいかせてしまっては何もならない。
俺はクリトリスを摘んだままやわやわとそれを捏ね上げながら耳もとに囁いた。
「まだ・・言う気にはならないか・・?」
するすると力をこめず撫でつづける指は大きくなったクリトリスを追い詰めながらも決して絶頂に導くことはない。
「あ・・あひ・・あ・・ん・・・が・・も・・や・・やぁ・・。」
くちゅくちゅ・・ぴちゃ・・・ぐちゅ・・・
イスターシャの足元にはすでに大量の愛液が水溜りのようになっていた。快楽を通り越してもはや苦痛に近いイスターシャの膣の入り口に指を浅くもぐりこませる。
「あ・・ああっい・・いい・・。おねがい・・も・・もっと・・もっとぉおお・・・。」
イスターシャの腰が浅ましく動く。半開きの唇の端からたらたらとよだれが零れ落ち、胸元を濡らしていく。腰が動いて求めるほどに俺の指は女のクリトリスから逃げるように動く。火をつけるようにこりこりと摘みながらも浅くゆるく入り口でかき回しそのくせ絶対にそれ以上高ぶらせることはない。
まさに蛇の生殺し状態にイスターシャはとうとうすすり泣く。
「あ・・いや・・いやぁ・・お願い・・・いかせてぇ・・・。」
「じゃ・・言ってみな・・・ん・・?」
俺がそう囁くとイスターシャはとたんに口を閉ざす。
「あ・・ぁあ・・い・・ひぎぃっ・・・っ!!」
その頃合を見計らって俺は力いっぱいクリトリスをつねり上げた。
「あ・・あが・・ひ・・ひ・・やめ・・・や・・。」
「言えよ・・。千切れたら一生気持ちよくなれねえぜ・・?」
声色だけは優しく女に語り掛ける。女の額に脂汗が浮かび、その顔が徐々に蒼白になる。
俺は、つねり上げたそのクリトリスの先端を指で軽く引っかいた。軽くとは言え、今されたらとてつもない痛みが走るはずだった。予想通り女は身も世もない悲鳴をあげる。
「ひ・・ひぎぃいいいいっ!!あう・・あううっ!!」
「・・・使い物にならなくされたく・・ないだろ・・・?」
「あ・・ああ・・・・うぐぅ・・・・。」
俺は女の耳朶をぺろりと舐めて囁いた。
「さ・・・いい子だからいいな・・・?」
「ひ・・あ・・・・・あぐ・・ぐぅ・・・・。」
チョロ・・・ジョロジョロジョロ・・・
俺の指を暖かいものが濡らし、徐々に水溜りが床に広がっていった。

「あ・・ん・・あ・・あああ・・・・んぐ・・ふ・・・。」
ナニが短いピウスはあたしの体を主に舐めたり触ったりすることに徹していた。今はあたしのアナルを舐めながらあたしの蜜壷に指を押し込んでじゅぼじゅぼ動かしている。その度に散々注ぎ込まれた精液が溢れ、あたしの太腿を汚していく。そうやって下半身をピウスに責められながらあたしの口はゴルドに犯されていた。ゴルドは腰を振ってあたしの喉奥までペニスを突っ込みながら伸ばした手であたしの胸をわしわしと揉みしだいている。
「うぉ・・いい・・・いいぜ・・・・。」
放出寸前のものをあたしの口から抜くと、ゴルドは仰向けに寝転がり、縛られたままのあたしを後ろ向きに跨がせ、腰をおろさせていく。
「あ・・ぁ・・・そんな・・そこは・・・。」
ゴルドのそそり立った肉棒があたしの菊門にぐいと押し付けられた。そのまま、ピウスのよだれで濡れ、ほぐれているのをいいことに下から突き上げられるようにそれを押し込まれる。
「は・・はぐぅ・・んぁ・・・ああっ・・・。」
ずんとした衝撃があたしを襲い、感覚が全てそこに集中するのを感じる。くらくらとするような快楽が甘美に腰を突き抜け、あたしは思わず腰を振ろうとした。
「おっと、待ちな。」
そういうとゴルドはあたしの足を膝の裏を持ち上げて大きく開かせた。不安定なあたしの体はそのまま後ろに倒れ、ゴルドの体の上にあたしは貫かれたまま仰向けに転がった。同時に痛みを伴った快美な感覚が背骨を突き抜ける。
「あうんっ!!や・・・。あ・・ああっ・・・・あん・・・ああああっ。」
間断ない喘ぎがあたしの唇から漏れる。お尻を貫かれたままのあたしの足の間にピウスが割り込み、指を3本も膣に突き入れてぐしゃぐしゃとかき回したかと思うとクリトリスをちゅうちゅうと吸いながら舐め始めたからだ。
やん・・たまんない・・。
「うへへ・・・よぉく絞まるぜ。こりゃ動かなくてもいい具合だな。」
ピウスがあたしの膣とクリトリスを突き上げ、舐めるたびにあたしの括約筋は快感に収縮を繰り返し、中に収めたゴルドの男根を締め上げていた。それがまたさらにあたしに快楽を与えることにもなり、あたしは仰け反って首を振りながら快楽に喘いでいた。
白い肌に汗が浮かび、滴り落ちている。慣れてなければ気が狂いそうな快楽だった。
ぐちゅ・・ぐちゅ・・ぬる・・・じゅぶ・・・じゅぼ・・
「あふ・・あ・・・あんん・・・あああっ・・。も・・だめ・・いく・・・・・。」
男達の責めは執拗だった。あたしの体が限界に震えだした頃、あたしの上にピウスが覆い被さってきた。
ぐ・・ずちゅぅ!
「あんんっ!!そんなぁっ!」
短いながらも太いペニスがあたしの膣に容赦なく押し入れられる。前からと後ろからと容赦のない突き上げに意識がかすみ始める。
粘膜越しに二つの肉棒があたしを犯し、暴れていく。それは徐々に硬さと体積を増しながらあたしの柔らかい襞を擦り上げていた。
そして。
「う・・うぉおおおおおっ!」
「ううう・・うううっ!!」
「あん・・ああああっ!!」
長い交合の果て。あたし達は同時に果てた。

「楽しんでもらえた?じゃあ、ほどいてぇ?」
「ああ、ちょっと待ってな。」
縄を解いてもらうのを待ちながら快楽の余韻にぼんやりとしているとあたしの耳に聞きなれた呪文が聞こえてきた。
「スリーピング。」
これは・・・。
考える暇もなくあたしは眠気に襲われた。いつものごとく神経を集中するもののなかなかうまくいかない。半ば催眠状態で術は終わったらしく、あたしは眠気と必死に戦いながら術にかかった振りをした。
・・・これが一番辛い。
眠いときに目を閉じて眠った振りなんて寝ちゃうってばぁああっ!!
それでも根性で起きていたあたしの耳に二人の会話が飛び込んでくる。
「この女も暗黒神殿に差し出すのかよ・・?」
あたしは一気に眠気が覚めた。
やっぱりギルドの内部でつながってたんだ。問題はギルド全体の画策かどうかだけど・・。
・・・ていうかふつーいきなり核心に近づいちゃうもん・・・・?
「全部差し出したら俺達の楽しみがなくなるだろうが。それに・・さすがにここにきた女を直接差し出したら疑われちまう。」
「そうだな・・。長もだがドレンにばれちゃまずい。」
「俺が長になる日までは慎重にいかねえとなあ。くくく・・・。」
「そうそう。あんな若造を長にして置けるかってんだ・・。」
なるほど・・・・クーデターを目論む幹部が資金源に暗黒神殿の件にも一枚噛んでたってわけね・・?
ということは一部の盗賊たちと暗黒神殿と、両方敵にまわすのかあ・・。
でも・・それだけにしちゃやけにすんなり行き過ぎてるような・・。
そもそもなんで依頼受けた連中が揃って・・漏れなく・・?
「じゃあ、この女どうする?」
話が再びあたしのほうに振られて慌てて耳をそばだてる。
・・どーでもいーけど眠い・・。
「どうすっか。とりあえず地下にでも放り込んでおいて薬漬けにするか。高級売春宿でつかえそうな体してるしな。」
誉められるのは嬉しいけど薬を使われるのはありがたくない。
だけど、当面殺されることはなさそうだ。
ということはとりあえず何とか脱出の手段を考えたほうがよさそうね・・。
一瞬あたしの脳裏にレオが浮かんだ。だけど慌ててその影を追い払う。
・・・頼っちゃだめ。ここに飛び込んだのは自分なんだし、何よりレオがここにもぐりこめるとも思えない。
救いなのはあたしが単独行動をして『レイア』と名乗ったこと。恐らくギルドで依頼を受けた情報がここに回ってきてもすぐにばれることはないはずだった。
考えをめぐらせているとあたしの体が抱え上げられた。どうやら地下とやらにつれていかれるらしい。
・・・あたしの根性もそこまでだった。
ネムサニハカテマセン。

売春宿を出た俺は急ぎ足で宿屋に向かっていた。
敵に回すのは暗黒神殿だけだと思っていたら大甘ちゃんというやつだ。盗賊ギルドが噛んでいるとはな。
暗黒神殿の狙いは女だ。つーことは単身で情報を掴みに言ったであろうラリサが気になった。
まあ、連中も見境なく女をかどわかすなんて事はしないだろうが、ラリサはあれでトラブルに進んで巻き込まれるという才能をもっている。
まあ、暗黒神殿に売られないまでも無事でいるかどうかが大いに気になるところだ。だが、いきなり盗賊ギルドに乗り込んで帰ってきたラリサとすれ違ってもいけない。で、俺はまず宿屋に向かうことにしたわけだ。
ところが。
「・・・やっぱ・・まだか・・・。」
もうそろそろうっすらと空の端が明るくなる時間だ。いくらなんでも遅すぎる。
俺は荷物から羊皮紙を出すと簡単な書置きをした。
少し考えて日常古代語(ロマール)で。
『余計なおせっかいしに出かけてる。戻ってきたらおとなしくここにいやがれ。 レオナルド』
魔法が使えるラリサなら読めるはずだった。俺はそれをラリサの置き荷物の目立つところに貼り付けると、さらに2、3日分の滞在費をカウンターで払って慌しく外に出た。
そのまま駆け足で裏通りを目指すと俺はざっと周囲の地理を見て回る。
盗賊ギルドなんてものは表には出ちゃいない。どこか何かしらの形でカモフラージュしてあるはずだ。
そして、その組織力は決して侮れるものではない。盗賊ギルドとは裏世界の元締めといってもいいくらいの組織力をその町で誇っているからだ。
俺は明け方の町をざっと走り、裏通りを何気に散歩する振りをしながら丁寧に見て回る。いかにも飲んで朝帰りという風に。
そして、俺は一軒の廃墟に目をつけた。いかにも一軒つぶれた宿屋風。表の石段にはよれよれの小汚い格好をした男が座り込んでいる。だが、玄人が見ればわかる。油断ないその目配りは恐らく見張りだろう。
行ってみるか・・・。
いかにも戦士然とした俺が話し掛けたところでまともな情報を得ることは期待できまい。だが、いざとなったら力ずくででも・・。
その男の方に歩こうとしたとき、後ろで気配が動いた。
「・・・・!?」
ばっと振り返った俺の視線の先には見覚えのある男がいた。
「おや、レオナルドさんじゃないですかぁ。おはようございます♪」
「・・・アッサムか・・?」
早朝の裏通り。そこに立っていたのは砂漠で出会ったアッサムだった。
「こんなところでどうしたんですぅ?」
明るく声をかけながらも近づいてくるアッサムに俺はいかにも飲んでますという口調で答えた。
「おう!朝の散歩よ!いやあ、気持ちいいよなあ、朝の空気!」
「ほんとですねぇ。実に気持ちいいものです。」
そう言いながら俺に近づいたアッサムは急に声のトーンを落としてにやりと笑った。
「・・・そんなに殺気を振りまいて歩いてたら狙われちゃいますよ?」
「・・・・!?」
思わず目を見開いて睨みつけた俺にへらへらと笑いながらふざけた風にアッサムは肩を組んだ。まるで酔っ払い同志の馴れ合いのように自分が来た方向へと俺を引っ張っていく。
「盗賊ギルドにはいきなり飛び込んでいかないほうがいい。それなりの準備が必要です。今のところラリサさんは無事ですから・・。」
「・・・貴様・・何者だ・・・?」
思わず殺気を帯びた俺の問いかけにもアッサムはにへらっと笑った。
「やだなあ、ただの薬売りですよぉ。」
「・・・そんな言い訳でだまされるわけねえだろうが!」
思わず胸倉を掴んだ俺の腕をアッサムがゆっくりと押さえた。
「・・・!?」
ただ無造作に掴んだように見えて、俺の手の関節を何気に極めている。
「とにかく、今は僕に任せてもらえませんか?蛇の道は蛇。あなたの実力を見込んで一つ、取引をしましょう。」
「・・取引だと?」
訝しげな俺の問いかけにアッサムはにっこりと笑って頷いた。
「ええ、取引です。しかも悪い話じゃあないと思いますよ?」
・・・この男、油断がならない。油断がならないということは信用がならないということだ。
だが・・・。
俺は数分考え、アッサムの胸倉からゆっくりと手を離した。
「いいだろ。内容を言えよ。」
アッサムの手が俺から離れ、俺は軽い痺れが残った手をそっとさすった。
・・・のんびりした顔に似合わずなかなかやるな・・。
「こんなところじゃあ話せませんよ。まあ、僕についてきてください。」
先に立ってアッサムが歩き出す。俺は一度裏通りのほうを振り返ると、アッサムの後について来た道を戻っていくことにした。

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