れっといっとびぃ4

「いや、マジでさ。何がなんだか俺にもわからなかったんだって」

 暢気に言いながら鎧を身に着けているレオをあたしはぎんと睨みつけた。寝不足のために隈ができてその表情にはさらに迫力を増していることだろうと思いつつ。

「危機管理がなってないのよ! おかしいとは思わなかったの?」
「おかしいなあと思っておまえを起こそうとしたら息子が起きちまっ……うげ」
「まったく関係ないじゃないのよー!!!」

 レオの顔面に拳をめり込ませて叫ぶあたしをどうどうとレイクがなだめようとする。

「まあまあ……気持ちよかったことに変わりはないですし……おぶぅ……」
「……喜んでるんじゃない」

 レイクの右頬を完全に捉えた拳にふっと息を吹きかけつつあたしは静かに倒れていく彼を横目で見やった。

「おい、腐っても依頼人なんじゃ……??」
「今のは契約とは関係ない部分だからいいのよ」
「あ、そ」

 さすが戦士、あたしの右ストレートを受けても軽く鼻の頭を撫でただけのレオにきっぱりと言い放ち、パンパンと手を払い、腰に手を当てるとあたしはさわやかな朝の森の中を見回した。

「昨日ここについたときから何かおかしかったのよね。なんだか妙な『匂い』がしたのよ」
「匂い? なんだそりゃ」
「うぐっ……。れ……レオさん……それ、痛い……」

 レイクに活を入れながら尋ねるレオにあたしは自分の推測を述べた。

「こんな森に大々的に魔法をかけるなんてよほど高レベルの術者じゃないとできないと思うわ。思うに、薬か何かを焚き染めたんじゃないかと思うのよ。お香か何かみたいにね」
「香? でも、それじゃあ本人まで巻き込まれちまわねえか?」

 不思議そうに当然の質問を返してくるレオにあたしは唇の前で人差し指を振ってちっちっちと口を鳴らす。

「自分が焚いた薬を自分で吸う馬鹿はいないもの。まず計画的犯行なら解毒剤か何かを予め飲んでると思うわ。そうでなければこの森にはいないか……」
「あ、それはないと思いますよ?」

 あたしの推理を遮るようにレイクが頬っぺたを水袋で冷やしながらのんびりと発言した。

「どういうこと?」
「前に惚れ薬作ったときもそうだったんですよ。失敗したのを自分で燃やしちゃって猪と大恋愛しちゃってたんです。あの時は逃げ回る猪を追いかける彼女の姿が森の名物になってましたっけ……。いやあ、今となってはいい思い出だなあ」
「いい……のか……?」

 懐かしげに微笑ましいエピソードを語るレイクにレオが片頬をカリカリとやりながら聞いている。あたしもいたく同感だったりする。そんなことを年がら年中やられてはたまったものじゃない。

「ねえ、どうして彼女は森の中に住んでるの? そういえば、まだ名前も聞いてなかったと思うんだけど」

 なんとなくいやな予感に苛まれながら念のために聞いてみる。答えが予想できちゃうのがいやなんだけど。

「彼女……名前はミリアというんですがね。前は村に住んでたんですが、私と付き合うために惚れ薬作っては村中の男にかけて夫婦喧嘩引き起こしたり、媚薬の失敗作作っては村を乱交パーティー状態にしたり、果ては神頼みするとかで若い乙女を人身御供にしようとしてつかまっちゃったんですよ。殺そうかと言う意見も出てたんですけど、それはかわいそうだといった私が彼女と結局付き合うことになり、彼女をさらに森に追放することで決着がついたんです」

 ……おひ。それ、むっちゃ危険人物じゃ……?
 同じことを考えたのか目を点にしたレオとあたしにレイクは暢気に笑った。

「まあ、私がミリアと別れてからはこの森に近寄る人はまったくいなくなったんですけどね。夕べみたいなことが後を絶たなくなったので」
『そんな女野放しにしとくんじゃねぇええええええっ!!!』

 あたしとレオのコークスクリューキックが見事に決まり、レイクは遠いお星様になりましたとさ。めでたしめでたし。

「め…めでたくないです……」

 ……まあ、冗談はおいといて。

「つまり……この森の家の中でミリアは常にあんな危険な実験……か、実践をしてるってことね? と言うことはあたしたちがここにいるのはばれてないと思って間違いないかしら?」
「…と、思いますよ? 彼女がそういう実験をするのはほぼ毎日のことなんで」

 今度は二つの水袋で両方の頬っぺたを冷やしながら頷くレイクにあたしたちは顔を見合わせた。同じことを考えたのか同時に頷く。

「明るいうちに動くのが吉ね」
「え〜……寝ましょうよ〜……ごぼぁっ!」

 わがままを言うレイクをやっと起きたエリザベスちゃんに乗せて、あたしたちは森の奥に向けて歩き出したのだった。



「・・・・ここ?」
「はい」
「……本当に…ここ……?」
「間違いなくここです」
「嘘だと言ってぇえええええっ!!!」
「嘘だ」

 ……あんたに言われても……。
 あたしにぎんと睨まれてレオが肩をすくめた。
 あたしたちは件の彼女の家の前にいた。いや……家というか……何と言うか……。

「とりあえず行くか」
「いやぁあああああっ!! どこが入り口かもわからないような生き物がすんでいるとも思えないような住処に入るのはいやぁあああああっ!」
「大丈夫です。中で洞窟につながっててちゃんと蝙蝠やイモリなんかもいますから。おかげで魔法薬の材料に困らないと彼女も言ってました」
「余計いやああああ!!!」
「ラリサさんったら我侭ですねえ。じゃあ、どんな家だったらいいんです?」

 断じて我侭じゃないっ。あたしは断じて我侭じゃないぞ……。
 その『家』は大きな葉っぱに覆われたドームのような形態をしていた。かなり大きなものだとは思うのだけど、何せ周囲に茂る複雑に絡み合う蔦や木でさっぱりその全容は知れない。レイクの言葉に注意深く後ろの方を見ると、確かに土の壁のようなものが見える。どうやらそこはちょっとした崖のようになっているらしい。
 ていうか……こんなとこに住める人間って……

「とりあえずずっとここにいてもしょうがないだろ。行こうぜ」

 早々に割り切ったらしいレオが前に立って歩き始める。

「まあ、そりゃそうなんだけどさ」

 レオの後についてしぶしぶ歩くあたしの後ろからレイクが声をかけた。

「あ、入り口はこっちです」

 レイクが指差した先には蔦でカモフラージュされた洞窟の入り口があった。

「……こんなとこで凝らなくてもよさそうなもんなのにな」
「……めっちゃ同感……」

 思いっきり頷きながらあたしは照明代わりのウィスプを召喚した。

「じゃ、行きましょうか」
「……で……なぜ私が盾に……?」
「それは大きな誤解というものだわ。やっぱり他人様の家に入るにはお知り合いからじゃないとねっ。失礼に当たるじゃない?」
「はあ……そういうもんですか?」
「そういうもんよっ」

 レイクを前に押し出すようにしながらあたしは大まじめに頷いた。

「いざ、お化け屋敷……もとい、人外大魔境……もとい、ミリアちゃんのおうちへ!」
「何気に酷いこと言ってるような気がするなあ」
「気のせいよ!」

 かくて、あたしは前にレイクを置き、後ろにエリザベスちゃんを引いたレオを引き連れて恐怖の魔窟へと侵入を開始したのであった、まる。
 洞窟はヒカリゴケを植えているのかほんのりと明るく、ウィスプの光がなくても何も困らないほどだった。……よく考えたら魔法使える(かもしれない)人間が住んでるのだからそれは当然のことかもしれない。緩やかにカーブを描く短い洞窟は先で左右に別れていた。

「どっち?」
「多分……実験に失敗したんだったら右の寝室のほうにいると思うんですけど」

 方向的にあの葉っぱで覆われた建物(と言っていいものかどうかは謎)をさしてレイクは言った。

「それ……一体どういう根拠……?」
「……いや、まあ、行けばわかります」

 ……今の間が果てしなく気になるんだけど。

「……じゃ、行ってみましょうか」

 相変わらずレイクを前に押し出しながらあたしたちは右に進路を取った。すぐ目の前にやはり葉っぱと蔦のカーテンがある。

「この向こう?」
「はい。そう…ですね」

 緊張した面持ちのあたしの問いかけにレイクは軽い調子で頷いた。
 ……こういうとこに住んでる女と付き合える神経だし。こっちはこっちで普通じゃないのかも知れない。

「じゃ、開けて」
「なんで私なんですかっ!!??」
「昔の男が開けるのがセオリーだからっ!!! ほらっ!」
「一体どういう……」
「……夕べのサービス料もらおうかな。あたしってばプロだからぁ♪」
「じゃ、開けますねー♪」

 にっこり微笑んだあたしにレイクが緑のカーテンに向かった。レオが「俺は払えんぞ」と言ってるのはとりあえず無視する。
レイクがカーテンに手をかけた。そして…扉(らしきもの)は開け放たれた



「……」
「寝てるなあ……」
「寝てますねえ……」

 zzzzzzzzzzzzzzzzzz………………

「よく寝てるなあ……」
「よく寝てますねえ……」
「……」

 zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz………………

 そう。敵は寝ていた。
 燃える焚き火から程近いところで。その近くに怪しげな粉薬とか怪しげな薬の材料とかがあるような気もするがあえて見ないことにする。
 茶色い髪はふわふわのショートカット。おそらく美人なんだとは思うけど、開けた口からはだらしなくよだれがたれてるし、かけたメガネは外れている。
 問題は、その格好だった。
 黒いローブはしどけなく前をはだけて小さ目の胸がプリンとかわいらしく飛び出している。そのまま視線をおろすと剥き出しの股間を晒したまま両足をだらしなく広げてある。右手の指は割れ目に半ば潜り込んでいて、てらてらと光っているのが見て取れた。
 つまり。
 彼女も夕べあたしたちが陥った状態に陥って、相手がいない彼女は一晩中オナニーをしていたと……どうもそういうことらしい。で、力尽きて寝ちゃったんだろうな。

「どうします? ……ってラリサさん、帰らないでくださいよっ!」

 ちっ。気づかれたか。
 だらしない顔で見入ってたからあたしはアウト・オブ・眼中だと思ってたのに。

「だって相手が寝てるんじゃあさあ、出番なさそうだしぃ」
「じゃあ、起きて彼女が実験を再開するころにまた出直します?」
「それもやだ」
「とりあえず……」

 あたしの肩にぽんと手を置くレオを見上げるとこちらもいいかげん帰りたそうな顔でぽりぽりと頬を掻いていた。

「起こして話をして来いよ。俺たちはここにいるからさ。交渉までは仕事に入ってないはずだしな」

 そう、レオの言うとおりなのである。あたしたちは何かあった場合のサポートが仕事なのだ。

「う……」

 渋い顔をしてミリアを見るレイクにあたしも口を開いた。

「何かあったらサポートしてあげるわ。話をしないことには始まらないんじゃない?」
「それはそうなんですけど……。わ……私よりラリサさんのほうが口がたちそうですし……」
「それは認めるけど男が自分の尻ぐらい拭けなくてどうすんのよ。行ってらっしゃい」

 レイクはレオに助けを求めるように視線を移し、肩をすくめたレオにあきらめたように大きなため息をついた。ようやく覚悟を決めたようだ。

「じゃ……行って……」
「レイクゥううううううっ!! やっぱり私のところに帰ってきてくれたのねぇええええええっ!」

 がしぃっ!

「うわっぷ……ミリア……起きて!?」

 唖然とするあたしたちの目の前で、自分の格好も構うことなくミリアはレイクに駆け寄り思いっきり勢いよく飛びついて抱きつくと顔中にキスの嵐を浴びせた。

「当たり前じゃないのぉおおおお!! 愛しのだぁりんの匂いがしたから飛びおきちゃったぁ♪」

 犬か、おまいは。

「ああああああっ! ラリサさん、レオさん! 見捨てないでくださいいいいいいっ!!」

 二人そろって背中を向けたあたしたちにレイクの必死の悲鳴が上がった。

「だって仲良さそうだしねえ?」
「俺たち邪魔っぽいよなあ?」
「ご……誤解ですぅううううううう!!!」

 涙混じりの声に仕方なく振り返ると相変わらずあられもない格好をしたミリアと一方的に熱い抱擁を交わされるレイクの姿があった。

「やっぱりいこっか」
「ラリサさぁああああん!!」

 ……別にいいじゃんよ。もててるんだし。
 大きなため息をつきながらあたしは二人のほうに向き直った。

「とっとと本題に入ったら?」

 投げやりなあたしの言葉にレイクがやっとミリアを引き剥がしにかかろうとする。……て言うか、ひそかに鼻の下伸びてるんですけど。

「そ、そうそう。ミリア、君に大事な話をしに来たんだ。わかってるとは思うけど……」
「大事な話っ!? ま…まさか……」

 両頬を押さえ、1、2歩後ろに下がるミリアに沈痛な面持ちでレイクが頷く。その様子を見たミリアの瞳が少しずつ潤んでいくのがわかった。
 さすがに引導渡されるのがわかったんだろうか。 

「そう……エリザベ……」
「ぷ……ぷろぽぉずなのねぇえええええっ!!?? きゃああああん(はぁと) どぉしましょぉおおおおおおおおおおお……」
「おまいは人の話を聞けぇええええええ!!!!」

 ばこぉ

「ぶぎゅ」
「ラリサ、人を簡単に足蹴にするのは良くないぞ?」
「いいのよ。依頼人じゃないから」

 あたしの足の下でぴくぴく動いているミリアを少々もったいなさげに見ながら口をはさむレオにあたしはあっさりと言い切った。

「さ、今度は心置きなく話を聞いて頂戴ね?レイク、続きを」
「き…聞きますから……ど…どいてください……」

 あ、ごめん。まだ踏みつけたままだった。
 あたしが上からどくと、よろよろとミリアは立ち上がってずれた眼鏡を指で戻した。そこに至ってやっと自分の服装に気づいたらしく、慌しく前を閉じている。

「あのぉ、ところであなたたちは……? 一体いつの間にいらしたんですかぁ ……ぶ☆」
「あたしたちはぁ、レイクの依頼でぇ、レイクといっしょにぃ、ここに来たの。あーゆーおーらい?」

 なぜか鼻を押さえながらこくこくと頷くミリアに、あたしは満足してレイクに視線を移した。

「じゃあ、お話の続きをどうぞ」

 あたしを見るレイクの目が怯えていたような気がしたけど、まあ、気にしない。

「じゃ、じゃあ、気を取り直して。ミリア、君が馬に変えてしまったエリザベスちゃんを元に戻して欲しいんだ」
「え……エリザベスちゃんんんん!!?? まあだあんな女とをぉおおおお……ぶひゅっ☆」
「本題から逸れないようにね」

 なぜか後ろ頭を押さえながら涙目で頷くミリアにあたしはにこりと微笑みかけた。

「私、悪いけど馬になんて変えてないわよ? あの術には生贄がいるんだけどこの辺じゃ捕まらないしぃ」

 ……つー事は結構高レベルな司祭かよ、おひ。
 思わず目を点にしてあたしはミリアを凝視した。その術を使えるというだけでかなりレベルは高いはずだ。これは気を引き締めてかかった方がいいかもしれない。……見た目はあれだけど。

「あなたが変えたわけじゃなかったら一体誰が?」
「通りすがりの盗賊にお願いしたの。ふと気が付いたらここで乱交パーティーになってたから、魔法で動物に変えちゃうわよぉって脅してエリザベスを適当な馬小屋の馬と交換してきて欲しいって。」

 なんちゅーことすんねん。
 思わず突っ込みたくなる手をレオに捕まれてかろうじてこらえる。そうそう。二人で話し合いをさせないとね。

「え……? と言うことはエリザベスは……一体どこに?」
「その辺の馬小屋にいなければ知らないわ? その盗賊たちが連れて行ったかもぉ♪」
「じゃあ……あの馬がところ構わず寝てたのは……? 呪いとかそういうわけじゃなくて?」

 あたしの疑問にレオが渋い顔をして口を開いた。

「いやあ……言おうかどうしようか迷ってたんだが、あの馬、結構年食ってたぜ?」

 ……つーことは老衰!?

「何てことだ!! じゃあ、すぐにエリザベスちゃんを探しに行かなきゃ!!」

 拳を握り締めて立ち上がるレイクにミリアが入り口に立ちふさがった。

「行かせるわけないじゃないの! あなたは私のものよ!!」
「君と私はとっくの昔に終わってるんだ!! 諦めてくれ!!」

 ……痴話喧嘩の様相を呈してきたな……。
 レオがあたしの耳にこそっと囁いた。

「俺たちの出番、なさそうじゃねえか?」
「そーね」

 レオに頷くとあたしたちは立ち上がった。痴話喧嘩にかかわっていられるほど暇じゃないのだ。

「どうしてもあたしを捨てるって言うのね!?」
「いや……捨てるって言うか……もともと別れてたわけだし……」

 おーおー、がんばれがんばれ。
 こそこそと出口に向かいかけたあたしたちの耳にミリアの言葉が飛び込んでくる。

「仕方ない、少し卑怯だけどこの手を使わせてもらうわっ!」

 なにぃっ!?
 ばっと振り返ったあたしの目にミリアの手に握られた何か紙の包みが飛び込んできた。
 まさか……惚れ薬!?

「レオ! 急いで出るわよ!」

 が、声をかけると同時にそれは炎に投げ込まれた。ぱっと赤い炎が上がり、紫色の煙が瞬く間にドームの中に広がる。

「煙を吸っちゃだめぇ!!」
「『こんふゅーじょん』♪」
「しまった!」

 ミリアがかけたのは混乱の呪文。要は頭をごっちゃにする呪文なんだけど、魔法に対して何の知識もない人間は簡単にかかってしまう。あたしは精神を集中して呪文の効果を跳ね飛ばし、口をハンカチでふさぐ。
 が。

「あんたがかかってんじゅあないわよぉおおお!!」

 そう。愛すべき相棒、レオは見事にコンフュージョンにかかっていた。どうやら煙のほうに気を取られていたらしい。レイクは言うに及ばず。そしてその結果……。

「ラリサ……愛してる……」
「ラリサさん……きれいだ……」
「…………どうして私じゃないのぉおおおおお!?」

 そう。男二人は目を血走らせてあたしに迫ってきたのである。どうやら薬の効果は『術者以外』が対象のようだった。

「あたしだって困るわよぉおお!! またこんなことになるなんて!!」

 二人の男の手があたしの服を剥いでいく。レオは巧みにあたしの手を押さえながら胸を露出していく。手馴れた風にあたしの服であたしの腕を拘束しながらあたしに口付け、露出した胸を捏ね上げる。

「や……ん……」
「あ……胸がおっきい……。いいな……」

 ポツリともれたミリアのつぶやきも気にとめるどころじゃない。

「ちょ……やめ……。んぁん……やぁ……」

 ミリアの目の前でレイクは目を血走らせてあたしのスカートを下ろし、あたしの茂みをあらわにしていく。蹴飛ばそうにもレオが片足を足で押さえているので不安定な足では限界がある。……無論、手を抜かなければ跳ね除けられるがそれでは相手が無事じゃすまない。レオが相手ではそれでも自信はないけど。
 レイクはあらわになったあたしの割れ目を割り開き、迷いもなくそこに舌を這わせた。

「あ……やだぁ……そこ……だめぇ……」

 あたしの弱い蕾を舐め、吸いながら膣に指を押し込んでかき回していく。すると不覚にも感じて力が抜けてしまう。
 だめだ……ミリアに解毒薬焚いてもらわないと……。

「って何一人でオナってんのよぉおおお!!!」
「え……だってあんまりいやらしいんですものぉ。めったに見られないしぃ」

 ぽ、とか頬を染めるな!頬に片手を当てつつも指を一生懸命股間で動かすなあ!!
 ぐちょぐちょといやらしい音を立てながら出入りするミリアの指はすでに濡れて光っている。見られていることに恥じ入りながらも感じて胸元をはだけるとすでにとがった乳首をきゅっと摘み上げているのが見えた。
 やば……あたしも気持ちよくなってきちゃった。

「だめ……もう……そんな……夕べもたっぷりしたのにぃ……」
「ああん……私も夕べはたっぷり一人でしたのにぃ」
 ……いや、違うでしょ?
 そう思いながらも膣壁を擦られるとたまらなく腰が震える。そうしながらもクリトリスを吸われるともうおしっこを漏らしそうなほどにいいのだ。おまけに後ろからはレオが「愛してるよ……」と低い割に甘い声で囁きながらあたしの胸を揉みしだき、こりこりと乳首をつまんでいる。
 勘違い…しないけどしそぉ……。

「ん…だめ…いっちゃうよぉ…。あ…あん…はぁ……」

 自分の股間から、そしてミリアの股間から聞こえるいやらしい蜜の音になんとも言えず頭の中がふらふらと酔ったようになりながらあたしはいやいやと頭を振った。腰にはレオの大きな硬い男根が当たっている。それがたまらなく欲しかった。

「ねえ……レオ……頂戴……。レオの……頂戴……」

 はしたなくもおねだりしてしまう。
 お客さんには気分出すためにおねだりすることもあるけどプライベートじゃしたことなかったのに。

「いいぜ。たっぷり食いな」
「あ……ああああんん!!」

 後ろから大きな男根に立ったまま貫かれる。くらくらするほどの快感に酔いながらレイクを見ると、レオに後ろから腰を取られて突き出したようになってるあたしの胸を揉みながら舐めたりしゃぶったりしている。そのレイクの足元に蹲ってレイクの男根を舐めながらミリアが自分の股間を弄っていた。あたしの胸をしゃぶるのに夢中なレイクはそれに気づいている様子もない。
 うーん……かわいそうかも……。
 ミリアに少々哀れみを覚えながらあたしは薬をくべられている焚き火のほうを見た。そこにはいろいろと使い残したらしい材料が散らばっている。
 ……?
 その残された材料に何か違和感を覚えながらもそれが何かは浮かんでは来ない。レオが突き上げる快感に思考が流されてしまうのだ。

「あん……あ……レオ……いい……あぁ……んん……」
「ラリサ……俺も……いいぜ……ラリサ……」

 中でレオがぐんと膨らむのがわかった。同時にあたしの壁もかなり擦られて目もくらむ快感が襲ってくる。

「あ……ああっだめ……いくぅっ!!」
「お……俺もだ……ううっ」

 あたしが達して腰を震わせるのと同時。レオの男根から熱い精液が迸る。

「あ……ああああっ!!」
「うっ……」
「あああんっ!」

 その熱さにさらに感じてさらに上り詰めると、レイクもミリアの口の中で果て、ミリアもレイクのものを口の中に受けながら達したところだった。
 ……あ、そっか……。思い出した。
 ふとあることに思い至ったあたしを今度は前からレオが抱きすくめ、口付ける。

「ラリサ……足りねえ……」
「ん……わかった……わかったから。ここを出たらたっぷりやりましょ?」

 なだめるようにレオの胸を撫でながらあたしはレオの男根に口付けるようにかがみこんだ。そして、いったばかりで呆然としているミリアの耳元に唇を寄せた。

「ラグッサの実の粉末が足りないのよ。はい。」

 そう。惚れ薬に必要だと聞いていた材料が一つ足りないことをあたしは思い出したのだ。レオの男根を舐めながら腰の薬袋から結構手にいれるのに苦労したその実を出してミリアに差し出す。

「え、いいんですかぁ?」
「……いいけど、あたしたちがここから出たらやってね?」
「も……もちろん♪」

 目を輝かせて頷き、早速焚き火のほうに行こうとするミリアの手を掴んであたしは言った。

「先にレイクを気持ちよくしとかないとまだあたししか見てないわよ。」
「そ……そうですよね。」

 二人で目を合わせてこくりと頷くと二人でレイクのペニスを挟み込んで舐め始める。
 寂しげにレオがあたしの体をいじったりしているけどとりあえずそれは気にしない。

「う……うう……ラリサさん……いい……いいです……」
「ふふ……いいでしょう……?」

 持てるテクニックの全てを駆使してレイクを気持ちよくしていく。その様子を見てミリアが呆然とつぶやいた。

「すごい……プロみたい……」

 プロです。
 レイクがぼんやりと快楽に流された頃合を見計らってあたしはミリアに目配せした。頷いたミリアがかっぷりとレイクのペニスをくわえ込む。それを見届けてあたしはレオの首に手を回し、耳元に囁いた。

「ここを出てたっぷりとしましょ? 連れて行って?」
「わかった」

 素直に頷いてあたしを抱えあげるレオにされるまま横抱きにされるとあたしはミリアに手を振った。

『がんばってね』

唇だけで語ったあたしに気づくとぐっとミリアは親指を立てた。もちろん口はレイクのペニスをくわえたまま。
 そのミリアの姿を瞳に納めるとあたしたちは洞窟を再び通って外に出た。出た途端にあたしはレオの腕から降りて森の外に向けて駆け出す。

「お……おい! ラリサ、待てよっ! 出たらやるんじゃ!?」
「やるから走って!!」

 一生懸命走りながらちらりと後ろを振り返る。少しピンクがかった煙が隙間から立ち上るのを見て、あたしはミリアが成功したことを知ったのだった。

「は……はぁ……はぁ……。で……結局なんだったんだ……?」
「うん。まあ、一番世の中の平和のために貢献できそうなカップルを作ってきた…と言う感じかしら?」

 全力疾走で森の外で息を切らしつつ、あたしたちは衣服を整えた。レオには簡単な解毒の呪文をかけて元に戻ってもらった次第である。薬にとらわれている間のことはあまりよく覚えていないらしく、レオはよくわからなそうな顔で頷いた。

「……で、結局食料は?」
「その辺は抜かりないわよ」

 レイクの荷物からくすねた保存食を手にあたしはにやりと笑った。

「あ、なるほどな。よくやった」

 うんうんと満足げに頷きながらもレオはどこか居心地悪げにしている。なにか別のことが気になっているようだ。

「どうしたの?」

 あたしの疑問に少々赤くなりながら頬をこりこりと掻いた。

「いや、ほら……。なんとなく中途半端だったからさ。収まりつかなくてさ」
「なるほど……」
 どうやら全く全然覚えてないわけじゃないらしい。その断片的な記憶の中ですら中途半端だったというのはちょっと哀れなような気もする。
 暮れかけた空に視線を移し、レオの背中の簡易テントを見た。それから、レオを見る。

「解消してから、寝る?」
「……俺はそのほうがありがたいな」

 レオって、意外と気を使うタイプかも。
 なんとなくおかしくなってくすりと笑うと、あたしはレオの首に腕を巻きつけた。

「じゃ、もう一頑張りしましょ?」

 ……エリザベスちゃんがどうなったかまでは依頼の外のことなので知らん。悪しからず。
 ……知らんったら知らん。

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