れっといっとびぃ3

「いーお天気ねー。抜けるような青空! さわやかな風! まさに春!!!」

 そう、春風は優しくあたしの頬を撫で、さらさらきゅーちくるの髪をなびかせていた。天使の輪もきらきらで絶好調!!

「……」

 ピー……ロロロロロロ……

「ほら! とんびよ! とんび!! なんとも風情があると思わない?」

 ぐ……きゅるるるるる……

「腹減った……」
「風情がないわねえ」
「うるせえ!! 腹減ってんのに風情もくそもあるか!!」

 ……しーん……。
 ぐ……ぐきゅるるるるる……

「……も、もう少しの辛抱よ!!! もうすぐ町が見えてくるわ!!」
「……どこに……?」

 レオの憮然とした眼差しを避けるようにあたりを見回すあたし。

「……」

 えー……と……。

 そこは、見渡す限りの原っぱ。どこをどう見ても町の影一つ見当たらなかった。

「だからさっきの森で狩りしようって言ったじゃねえかよ!」
「だって通りすがりのおぢさまが『町まですぐだ』って言ったんだもの!!」
「現にねーだろーが!!」
「ううっ! なぜその事実を!!」
「見ればわかるわーーーーー!!!」

 ……まったくその通りなのだ。
 今朝方あたしたちはとある小さな森を抜けてきた。まあ、林に近いものではあったんだけど、ウサギくらいはいそうだと言うんで狩りを提案したレオにあたしは町が近いなら町での食事がいいと駄々をこねたのだ。だって起き抜けに通りすがったおぢさまに聞いたら「直に町につく」って言ってたんだもの・・。で、森で最後の保存食を食べたんだけど・・・。

「町につく前に飢え死にすんぜ……」
「……森に戻る?」
「もうすぐ日が暮れるわい!!」

 確かに。あと小1時間も歩けば日が傾き始める。森につくころには当然真っ暗だ。そうなれば到底狩りどころの話じゃない。

「えー。ぢゃあ、あたしでもた・べ・る?」
「余計腹減るわ!!」

 ちぇっ。せっかく上目遣いのうるうるな瞳でかわい子ぶってみたのに。
 そー言えば旅に出てからこっち男とやってないな……。レオもあたしに手を出したりしないし。見た目スケベったらしそうなのに。

「……仕方ねえな。今日は食べられないぐらいのつもりでいるか。旅してて毎日食えると思うほうがおかしいしな」
「そ、そーよ! その通りよ!」
「おまえが言うな」
「……はい……」

 と、そこに。
 レオに冷たく突っ込まれてしゅんとしたあたしの耳になにやら乾いた音が聞こえてきた。
 ぐー……きゅるる……
 これはあたしのおなかの音。ぢゃなくて。
 ぱからっぱからっぱからっ……

「ねえ? 蹄の音、聞こえない?」
「あん?」

 袖を引っ張るあたしに怪訝そうな顔をするレオ。が、すぐにその顔つきが変わる。
 ぱからっぱからっぱからっぱからっ……

「ほんとだな……」
「ね? きっと旅人よ! 食べ物分けてもらいましょうよ!」
「…そううまくいくかなあ……?」

 レオが疑い深い眼差しであたしを見る間にも馬はどんどん近づいてくる。馬には間違いなく人が跨っていた。

「だーいじょーぶ! 任せて!」

 どんと自分の胸を叩いて請合うと、あたしは街道の真中に踊り出た。ぶんぶんと手を大きく振って馬上の相手に向かって叫ぶ。

「お願い!! 止まってーー!!」

 馬はまっしぐらに走ってくる。こちらに向かって。ということはきっと気づいてもらえてるはず!

「おーい!! とまってぇーーー!」

 馬はまっしぐらにこちらに向かって……まっしぐら……まっしぐら……?

「どぅええええ!!?? と、止まんないいーーーー!!??」

 慌てて脇に転がりよけたあたしがいた場所に向かって馬は人間ごと走りこんできた。
 そして。

 ぱからっぱからっぱからっぱからっぱからっ……ひひーーーん……ぼて……バタッ

 ……ぼて……? バタッ……?

「痛いぢゃないですか!!! 私のエリザベスちゃんになんてことするんです!!!」

 転んだ馬の馬上から当然転がり落ちた人物がいきなりあたしに食って掛かってきた。
 んなこと言われてもねえ……。

「いや……あたし何もしてないし……」
「……どうして俺らにかかわるのってこーゆーノリのやつらばっかかなあ……」

 レオのつぶやきに深い同意を覚えながらあたしは苦笑いを浮かべて相手を見た。
 何の事はない。あたしの前で止まろうとした馬がいななきながら後ろ足で立ち、その動きについていけなかった騎手が落ちてなぜか馬もいっしょに転んだという・・・非常に単純明快な事故である。
 ぼてっと倒れたままの馬に見た目だけなら非常にハンサムなその男は取りすがり、ワンワンと泣き出した。

「え……エリザベスちゃん! 私を置いて死ぬなんてぇーーーーーーっ」
「いや……寝てるだけみたいですけど……?」

 zzzzzzzzzz……

 馬は立って寝ると聞いた覚えがあったんだが。まあそんな与太話は抜きにしてもエリザベスちゃんはしっかりいびきをかいて横たわったまま寝ていた。

「あ、なーんだ。じゃあいつものことだからいっか」
『いっつもなんかい!!!』

 あたしとレオの声が見事にハモったのは言うまでもない。



「食べ物……ですか?」
『そうそう』

 こくこくと同時に激しく頷くあたしとレオ。

「私もそうたくさん持ってきたわけじゃあないんですけど……」
「10ガルド払うわ!!」
「いや、そんなにはいりませんけど……」

 しぶしぶと言った様子でレイクと名乗った男が取り出した干し肉を奪い取り、代わりに20ガルドを押し付ける。

「あ!! ラリサ、てめぇ!! ちょっと多いぞ!!」
「いいぢゃないのよ!! お金出したのあたしなんだから!!」
「おまえ細っこいんだから少しでいいだろうが!! 男は体力勝負なんだ!!」
「細いからこそ体力いるのよ!!」
「いてっ!! それは俺の手だぁあああ!!」
「色が似てるからちょっと間違えただけじゃないのよぉおお!!」
「……あのぉ……」
『ん?』

 お互いがお互いの持った肉を噛み千切りながらあたしたちはレイクを振り向いた。

「もしかして、冒険者とか言う方たちですか?」
『多分、そーだけど?』

 レイクの質問に二人して肉を噛みながらぶんぶんと頷く。するとぱっとレイクの顔が輝いた。きらきらとお目々を輝かせ、両手を胸の前に組み合わせたりなんかしてにじり寄ってくる。

「ちょうどいい! 私を手伝ってもらえませんか? もちろん報酬はお支払いします!!」
『……ほへ? 依頼ぃ??』
「そうです! 一人じゃ自信がなくて、どうしようかと思ってたところなんですよ!!」
「ま……そうだな……。話に寄っちゃという感じで……」
「そうね……」

 レイクの様子にすっかり毒気を抜かれたあたしたちは、手に手に干し肉を持ったまま話を聞くことにしたのだった。

「でもさ……」

 ちらりとレイクの後ろに視線を向けるとエリザベスちゃんはまだ寝ていた。

「なんです?」
「移動したほうが良くない? ここ、見晴らし良すぎてキャンプ張るにも向かないわよ? もう少ししたら日も暮れるし……」
「ああ、それなら無理だと思います」
「なんで?」

 あたしの問いにレイクはニコニコしながら答えた。

「エリザベスちゃんは一旦寝ると一昼夜起きないんです。」

 …………ぷちん。

「ま…待てっ!! ラリサ! 落ち着け!!」
「放せぇえ!! 馬刺しにしたるぅぅうううううう!!!」
「ひぃいいいいい!! 人殺しぃいいいい!」

 レオに羽交い絞めにされながらあたしは叫んだ。

「馬を馬刺しにして何が悪いぃいいいいいい!!」
「エリザベスちゃんは馬じゃありません!!」
『へ?』

 馬ぢゃない……?
 いびきをかいて寝る馬の前に立ちふさがって必死に叫ぶレイクに、あたしたちは二人そろってあほ面をさらしたのだった。



「つまり…話を要約すると。あなたの昔の彼女が女癖の悪いあなたに振られた腹いせにかわいそうな新しい餌食のエリザベスちゃんに魔法をかけて馬にしちゃったと……。そういうわけね?」
「……なんだか余計な単語が混じっていたような気がしなくもありませんが、おおむねその通りです」

 失礼な。こんなに簡潔にまとめてあげたのに。
 なぜか不満そうなレイクと、その後ろでレイクと一緒に足を縛り上げたエリザベスちゃんを担いでいるレオの前を歩きながらあたしは頭の中で話を整理した。いくらエリザベスちゃんが寝ているとはいえ、いつまでも原っぱの真中にいるわけにはいかない。そこで、あたしたちは少し北に進路を取り、その先にあると言う森に向かったのである。ちなみに町までは『馬で』半日だってさ。確かにあのおぢ様馬に跨ってたっけ……。

「しかし、人間を馬に変えるなんてできんのかね?」
「暗黒神かなんかに縋って呪いをかければ不可能じゃないわよ。自分がそういう魔法を使えなきゃ結構なお金つまなきゃなんないけど」

 不思議そうなレオに解説をする。もっとも、自分で暗黒神を信仰するような危ない女とは付き合わないだろうから、暗黒神殿に依頼したんだろう。もしかしたらあの兄妹とのつながりも出てくるかもしれない。

「……そういえば家に怪しい偶像とか、イモリの腸とか、猿の手とかあったなぁ」

 つきあっとったんかい!!??

「『幸運のおまじない♪』って言われてたからそうなんだと思ってたけど……。おぶぅ」
「んなわけあるかあああ!!!」

 思わず裏拳でどつき突込みを入れてあたしは頭を抱えた。

「で、具体的にはどうしたいわけ?」

 きれいな夕焼けを見ながらあたしはウィル・オー・ウィスプを召喚した。ウィスプは光の精霊で、夜間は明かりにもなるし、敵にぶつけるとしびれてダメージを与えると言う一粒で二度おいしいやつなのだ。

「まずは彼女に会って説得します」
「……暗黒神に仕えてるような彼女だもの。無理じゃないかなあ?」
「いいえ!! きっとわかってくれるはずです!! 彼女と私は愛を誓い合った身!!」
「……振ったくせに」
「うぐぅ」
 
ナイスなレオの突っ込みにおののくレイクをあたしは振り返った。

「かわいさあまって憎さ100倍っていうじゃない? もし彼女があなたを愛するあまり聞き入れなかったらどうする気?」

 あたしの言葉にレイクが言葉に詰まる。

「その時は……力ずくでも……」

 重いその口調にあたしは頷いた。

「じゃあ、その時は力を貸すわ」

 やがて、あたしたちの前に森が姿を現した。

「ところで……その彼女の家ってどこなの?」

 尋ねたあたしにレイクは森を指差した。

「彼女の家ですか?この森の中です」
『それを早く言えぇえええっ!!』

 あたしとレオの突っ込みがきれいに決まったのは言うまでもなかった。



 馬になったエリザベスは、どうやら人間としての意識はないらしかった。すなわち、一度跨ったらどこに行くかわからない。それが、二人があんなところを走っていたいきさつだった。まあ、おかげで俺たちは食事にありつけたわけだが。
 結局、その彼女とやらの家は森のかなり奥地にあると言うことで、俺たちは森の入り口付近にキャンプを張ることにした。ラリサのウィスプとやらの明かりを頼りに多少の狩をし、食料も確保できた。食い物は大事だ、うん。
 ラリサは森に入ると何かを感じたらしい。だが、それが何かは特定できないらしく、しきりに首を傾げていた。ラリサに言わせれば、何か焦げ臭いらしいのだがまったくそんな匂いは感じられなかった。俺たち剣士に言わせれば、雨露しのげてとりあえず敵から身を隠せればそれでいいのだが。

「見張りを立てるだろ?」

 炎を囲んで食後の一時、俺はみんなの顔を見ながら尋ねた。

「あたし、先に休ませて。睡眠不足はお肌の敵なの。それにちょっと調子も悪いし」
「…あの日か?」
「違うわよっ。とにかく、お休みなさい」

 当然のように言うラリサに俺は頷いた。この調子で朝まで寝ることもまあ良くあることだが、それは言うまい。俺っていいやつ。
 それに、俺のほうは少々ぼんやりとはするものの気分はすこぶる良かった。なんとなく暑さを感じるほどに。

「へーへー。じゃあ俺が最初に見張りに立つよ。次はどうする?」

 次は、といっても人間の形をしたのは3人しかいない関係上、自然とレイクを見ることになる。

「っておい」
「……zzzzzzz……」
「……」

 ガシッ ゴリッ

「わあああ!! ギブギブギブ!!!」
「レオ!! 腐っても依頼人なんだから殺しちゃだめよ!!」
「く…腐ってもってなんですかぁああ!!」

 ラリサの制止に俺は関節を極めていたレイクの足をしぶしぶ放した。

「5時間で起こすから後は頼む」
「は…はひ……」

 なぜかおびえて頷くレイクに、俺は満足して頷いた。
 かくして俺たちは休息に入ることにした。毛布に包まるラリサのそばで俺は木にもたれるようにして腰掛ける。
 今日は月明かりが明るいので視界もいい。周囲を油断なく見ながら俺は考えていた。
 ラリサと旅に出ることは、はじめ、俺の予想範囲外のことだった。一人でいい。片も自分でつける。そう思っていた。誰かと組んだこともそうそうなかったからだ。
 ファイターがメインでないラリサは一人で戦う能力にも十分長けていながら、誰かの背中を守ることもうまい。おそらく、一人ででも、誰かと組んでも十分うまくやっていけるだろう。……あの口がなければ。
 じゃあ、なぜ門の前で俺はラリサを待っていたのか。一言で言うなら、興味が湧いたからだ。
 ラリサが売春婦だと知ったのは、傷を癒した神殿でだった。まだ飛び込んだあのときは炎に包まれたあの建物が売春宿だということを俺は知らなかったからだ。口止めされていたらしく相当渋った神官を何とか口説き落として聞いたんだが、正直驚きだった。
 魔法なんていうのは誰にでも使えるもんじゃない。まず『才能』という素地が必要なんだが、これですら誰にでもあるものじゃない。その上でたいてい、誰か高レベルの魔法使いに師事するか、神殿に神官となって入って神様の声とやらを聞くかぐらいしかない。後は生まれつき魔法が使えると言ったらエルフくらいのものだが、エルフの数は少ない。俺は今までエルフを2人しか見たことがなかった。その魔法を、学ぶすべがなさそうなラリサが使いこなしている。それもかなり高レベルにだ。一見して努力なんぞ無縁そうなくせしてだ。おまけに体術にも長けている。剣を使うのはあまり得意ではなさそうだったが、それにしてもあの身のこなしはやはり只者じゃあない。
 こいつは一体どういうやつなんだ……?
 おもしろい。そう思った。それに、こいつになら背中を預けてもいいような気がしたんだ。技量は信頼できるし、仕事に関して裏表がない。こいつの性格を見ればわかる。
 惚れたと言うのとはちょっと違う。珍獣を見るようなもんだな。
 その好奇心にしたがって、今、俺はこいつと一緒にいるわけだ。

「ま……因果なものだよな……」

 ポツリとつぶやいて俺は木にもたれかかった。そのとき、ふと、違和感が背中を駆け抜けた。

「……ん……?」

 なぜだか意識がぼんやりする。さっきから感じていた暑さが余計にひどくなったようだ。それに、なんとなく胸がざわつく。

「……?」

 何か異変でも起きたかと周囲を見回すが特に変わった様子はない。俺は少々よろけながら立ち上がってみた。
 何かやばい。
 俺は直感的にそう思った。
 そこに、ラリサが寝返りを打つ。

「ん……」
「うあっ…」

 ズクン……
 おいおい、まじかよ……
 ラリサのあえぐような吐息と月明かりに白く浮かび上がる首筋に俺の一部分が反応してしまったのだ。今までこいつにはそんなこと感じたこともなかったのに。
 妙だ……
 なにやら強制的に急かされているような気がして頭を振る。だが、頭にかかった靄は晴れるどころかその濃さを増す。
 やべえ。ラリサを……おこさねえと……
 かろうじて働く理性の命じるままにラリサのそばにひざまずき、その華奢な体を揺さぶった。

「ん……なあに……?」

 寝つきのいいラリサが寝ぼけ眼で薄目を開けた。

「ラリサ……なんか……妙だ……」
「え……?」

 俺の様子に何か異常を感じたのか、さすがというべきかその身をすぐに起こしてあたりを見回すラリサ。そのラリサの頬が月明かりの下でも上気していくのがわかった。

「なんか……暑い……?」
「暑いっつーか……」

 だめだ……。
 それ以上何も考えられなくなって俺はラリサを押し倒した。

「え……ええっ!? ちょ…ちょっと待ってよ!! レオ!?」

 驚いた声をあげるラリサを抱きすくめ、俺はその小さな唇を無理やり奪った。
 この異常な状況の中、ラリサの吐息は甘く感じられた。どうやら完璧にやられてるらしい。

「ん……んんぅ……ふ……んむ……」

 ぷっくりとした唇を割ってしっとりとした内部に舌を侵入させる。驚きのせいか、それとも自分の中にも生まれた熱のせいか、大して抵抗しないのをいいことに俺はラリサの口内を思う様貪った。甘い。考えれば女に触れるのも久しぶりだ。唾液を啜りながら俺は酔ったようにラリサの唇にむしゃぶりついた。

「ん……ん……やぁ……レオ……ぁん……」

 そうしながらもラリサの胸をまさぐり、ハードレザーアーマーの胸当てを外していく。その下にはかなり大き目の乳房が服の下に感じられた。その柔らかい感触を楽しみながら揉みあげていく。

「レオ……ふぁ……あん……一体、どうして……ぁ……」

 ガスッ

「うぁ…っ」

 一瞬後頭部に鈍い痛みが走り、視界がぐらつく。ラリサの手を見るとブラックジャックが握られていた。

「目ぇ、覚ましなさいよ!」

 隙を見て俺の体の下から転がりだしたラリサが、自分も赤い顔で息を荒げながら俺をにらみ付ける。その顔が妙にかわいらしい。だが、かなり手加減したのか、それとも俺の状態が普通でないのかそれとも両方なのか。さらに興奮が高まるだけで収まることはなかった。俺は再度ラリサに覆い被さるとその両腕を片手で拘束し、その耳朶に噛み付くように口付けた。

「あ…はぅん…っ」

 敏感な体は面白いようにはねて反応する。耳朶から首筋を舐めながら俺はラリサのシャツをたくし上げ、直接その柔らかさを堪能した。

「ぁん……も……やぁ……したいんなら……こんな時じゃなくても言ってくれれば相手するのにぃ……」
「今したいんだよ。黙ってろ」
「そんなぁ……ぁん……」

 形が変わるほどに乳房を揉み解しながら先端のピンク色した突起に口付けた。そのまま咥えて舌でちろちろ舐めるとすぐに硬くなる。感じやすいのか、そのままきつく吸い上げたり、指で弄ってやると背をのけぞらせてあえぎ、太ももをもじもじと擦り合わせる。

「もう濡れてんじゃねえか?」

 耳元で囁くとラリサの眉が色っぽく撓った。春を鬻ぐのが仕事の女とは思えないほどに初々しく首を振る。

「やぁん……そんな……言わないで……」

 ラリサの表情にますます興奮を覚えながら皮のスカートの下に手を潜り込ませる。案の定、下着から染み出すほどにそこはじっとりと潤っていた。手を放してももう抵抗しないことを見て取ると、ラリサの下着を千切るように剥ぎ取り、大きく足を開かせた。

「や……やだぁ……見ないでぇ……」
「もうびっちょりだぜ……?」

 俺の言葉の通り、そこは透明な蜜にぬめり、てらてらと月明かりに光っていた。そっと指を触れるとくちゅ…といやらしい音を立てて襞が震える。抱えた膝小僧にキスしてそこから舌を這わせようとしたとき、不意に月明かりが翳った。

「……?」

 不思議に思って振り返るとそこにはぽやんとした顔のレイクが立っている。レイクはふらふらと俺たちのほうに歩み寄ると、ラリサのそばに座り込んで覆い被さった。
「んん……!? んんーーーっ!! んむ……は……ふん……ん……」

 唇を塞がれてはじめは抵抗していたラリサも、深いレイクの口付けと、足をなぞる俺の舌に力が抜けていった。やがて、レイクの手がラリサの胸に伸び、掌に余るその大きな胸をわしわしと揉み始める。

「ふあ……ん…ん…んうう……」

 ラリサの鼻に抜ける喘ぎを聞きながら俺は舌を徐々に上に向かって這わせていく。びちゃびちゃと蜜をたらしつづけるそこに指をぐいと押し込み、膨らんで硬くなっているクリトリスに舌を押し付けるとラリサの腰が跳ねた。

「う…すげ……」

 指が襞にこすられていると思うほどに中の粘膜がうねり、俺の指を締め付ける。その感覚を楽しみながら俺はラリサの膣を弄り、こりこりとした突起を唇で噛み、吸い上げた。

「んんんっ!! ん……ふあ……そんな……ああっ!!」

 じゅぶじゅぶと白く濁った愛液が俺の指に絡みつき、地面に滴り落ちていく。その愛液を啜りながらも突起を責め上げていくとやがて、指が動かないほどに襞がきつく締め付けた。それに乗じて突起を激しく舐め、吸う。

「ん……やぁう……ん……いっちゃ……んんはぶ……んんんっ!!」

 俺に下半身を責められ、胸をレイクにいいように捏ね回され、吸われながらラリサは達した。俺はぐったりとするラリサの両足を抱え込んだ。すると、レイクもズボンの前を寛げて自分のものを取り出しラリサの顔の上に跨った。

「やん……そんな二人も……んん……んぶぶううっ!!」

 まるで何かに操られるように俺は膣の奥に向かって、そして、レイクが喉の奥に向かってペニスを勢いよくつきこんだ。最初は目を白黒させていたが、さすがプロ。ラリサは俺のものを襞で締め上げるようにしながらレイクのものを喉の奥でしごきあげていく。

「う……あ……ラリサさん……すごい……」

 すごいのはこっちもそうだった。気を抜いたらすぐにでも持っていかれそうなほどの膣の動き。柔らかいくせにぴったりと吸い付いてきちきちと締め上げる。

「だめだ……出る……」
「わ……私も……」

 がくがくと腰を震わせてレイクがいったかと思うとレイクが吐き出す精液を喉を鳴らして飲み込みながらこちらもすごい勢いで締め付けられる。こうして、俺もあっけなく持っていかれてしまったのである。レイクが放ったものを飲み下しながらラリサが荒い息をついた。

「一体……どうしたって……」

 だが、一度で収まる熱ではなかった。俺は、ひょいとラリサをひっくり返すと後ろから貫く。

「え……ちょ…あ……ああん!!」
「わ……私も……」

 ラリサの体にふらふらと取り付くレイクに俺はラリサの膣から一物を抜いた。

「ん……え……?」

 あっけにとられるラリサの尻を弄り、窄まったアナルを指で弄る。

「あ……そこは……」
「だめなのか?」

 思わず声を上げるラリサに俺はすかさず問い掛けた。ここを使う娼婦は多い。ラリサがここを使い慣れているならここでも感じるはずだ。

「やぁん……。だめじゃ……ないけどぉ……」

 潜り込む指にラリサはあられもない声をあげる。アナルは指を簡単に受け入れられるほどにほぐれていた。俺はそのあたりまでたれていた愛液を使ってそこを揉み解し、ペニスをあてがう。

「いくぞ」

 確認する間もあらばこそ。

「え……?きゃ…きゃああんん!!」

 ずちゅ……ずりゅりゅりゅりゅ……

 ラリサのか細い悲鳴とともに尻の穴は俺の決して小さくはないそれを飲み込み、締め付けた。全て収めてしまうとしばらく動かずに、ラリサのそこが俺のものになじむのを待つ。やがて、直腸がもぞもぞと蠢き始めるに当たって、俺はラリサの体を抱き上げた。尻に突き刺したまま、ちょうど子供がおしっこをするように足を広げてやる。

「あ……ぁん……やだ……恥ずかしい……」

 顔を赤くして首をふるふると振るラリサの首筋を舐めながら俺は呆然とこちらを見ているレイクに声をかけた。

「来いよ。前に入れてやんな」
「あ……はい……」

 ふらふらとレイクは寄って来るとラリサの真正面に膝をついた。

「あ……だめ……そんな……こわれちゃうぅ……ああん!!!」

 俺もそうだが、レイクにしても似たようなもので、ラリサを気遣う余裕すらないらしい。レイクはおびえたような声を出すラリサの前に陣取るとペニスをあてがい、そのまま容赦なしにつきこんできた。

「あ……ああ……だめ……だめぇ……!! は……ぁうう!!」

 狂ったように喘ぐラリサを挟み込んで俺たちはもくもくと腰を振り続けた。中でラリサの粘膜越しに相手のものと触れ合うのがなんだが、それがまた背徳感を刺激して快楽を煽る。俺たちは狂ったようにラリサの体を貪った。

「う……あ……くそ……っいっちまう……っ」
「私も…いってしまいます……」
「だめ……許して……あ……ああん……やぁああああっ!!」

 何かに取り憑かれたように俺たちは快楽を際限なく貪り続けたのだった。



 そして翌朝……
 あたしはげっそりとやつれきり、目の下にしっかりと隈を作ってさはやかな朝日を受けていた。しかも素っ裸で!!

「どういうことよぉおおお!!!」

 すやすやと惰眠を貪る男たち…しかもやはり裸の…を横目でにらんであたしは叫んだ。

「乙女の睡眠時間を返せええええええええ!!!!!!」

 その日二人分の墓標が立ったかどうかは定かではない。

前へ 次へ

このページのトップへ