クリムゾン レイヴ21

「道よ、開け!!」
操の言霊に呼応して道場の空間の一部に亀裂が入る。その向こうはなんともいえない闇の世界。
「さ、行くわよ。」
「・・・・ええ。」
がくがくと震える足と、挫けそうになる己を叱咤して遙はごくりと生唾を飲み込んだ。そして、頷く。
「助けなきゃ・・ね。」
その遙の震える声に操がにっと笑った。
「そうよ。あたしたちしかいないの!」
手に手を取り合い、二人は闇の世界へと沈んだ。

「くくく・・・やっぱり不完全な期間が長すぎたんだねえ?」
くすくすとおかしげに笑いながら己を揶揄する声に漣はきっと相手を睨みつけた。
「やかましい!何百年もかけて人の魂食って来た化けもんといっしょにするんじゃねえ!!」
「心外だなあ?僕は分断された僕の力を取り込んだに過ぎないよ?力ははじめから僕のものだ。そんなことを言われる筋合いはないねえ。」
からかうように言いながら刹の指が漣の顎を捉え、その黒く輝く瞳を覗き込んだ。
その姿は無残なものだった。
瘴気の塊が蔦のように、触手のように漣の身体に絡み付き、その全身を縛めている。露出しているのは頬が青く腫れ上がり、切った額から流れる血で赤く染まっている顔と、裸にされてあちらこちらに裂傷を作って血を流している胸、そして、そのまま引き締まった腹から太腿までである。漣を包み込んだ瘴気は不気味に動き回り、その体を弄っていく。特に男根には幾重にも絡み付いて先ほどから耐えがたいほどの刺激を漣に送っていた。
ぎりぎりまでそそり立ちながらもなかなかいこうとはしない漣ににやにやと笑いながら刹が囁く。
「いい加減しぶといねえ。いっちゃったらいいじゃない?気持ちよくないわけじゃないんだろ?」
その刹の言葉に漣は唇を噛み締めた。
助けを待っているわけじゃない。先ほどから勝機がないかとずっと隙を窺い続けているのだ。だが、さすがに老成の賜物か、それとも化け物に近いせいか、なかなかその様子を見せようとはしない。巫女を得て力が上がったはずの漣をこうもたやすく捕らえてしまった事からもそれは伺えた。
「泰山のじいさんが『孫の方が強い』って言ってたけどさぁ?大したことないよねえ?」
馬鹿にしたように笑いながら掴んでいた漣の顎を離す。その言葉に歪む漣の顔を面白そうに見ながら手近なソファに腰をおろした。
「まあ、安心しなよ。楽には死なせないから。まだ考えてるんだ。時間をかけてゆっくりと染めるのがいいか・・・。」
ふふ・・・。
酷薄にその唇が歪む。その瞳が昏い色を帯びた。
「じっくりと・・じわじわと快楽に狂わせてから狂い死にさせるか・・・。」
「どっちも・・ごめん蒙るな。」
多少辛そうにしながらもはっきりと断る漣の口調にくすくすと含み笑いを浮べる。
「君の意思なんて関係ないね。僕がやりたいようになるのさ。そうだな・・。君は殺すのは少しもったいないかもしれない。ゆっくりと、時間をかけてじわじわと染めてあげるよ。そのほうが屈辱的だろ?」
「きさま・・っ!?」
その瞬間、ぞわりと瘴気が蠢いた。
「な・・・ううっ」
ペニスに絡み付いていた瘴気が激しく動き出し、まるで膣の中にでもいるような刺激を漣に与え始める。
そして・・。
「な・・やめ・・っ!!」
もぞり・・
背中を覆っていた瘴気が一部触手と化して漣の菊座をなぞったのだ。ぞくりとした震えが背中を走ったかと思うと、その触手がじっくりと漣の尻の中に侵入を開始する。
「く・・・『やめろ!』『離せ!』」
言霊を放ちながら暴れる漣を嘲るように見ながら刹は笑った。
「無駄だよ、ここじゃあ君の力の半分は吸収されちまうんだからさ。諦めて大人しくしたら?気持ちいいからさ。」
「っか・・・。諦めてたまっかよ!『消えろ!!!』
漣が吼えた。同時に、後門を弄っていた触手と、ペニスを弄っていた触手が跡形もなく消える。
「ほう・・?」
刹の片眉が跳ね上がり、その身を僅かに起こす。
「この期に及んでまだそんな力があったのかい?『黙』!」
「『返す』!!」
刹が放つ言霊を言霊を用いて返すとその言霊を刹は手の一振りで消滅させた。にやりと残酷な笑みが浮かぶ。
「しぶといのは面白いけどさ、過ぎるとつまんないものなんだよ。」
ゆっくりと立ち上がり、漣に歩み寄るとその手が勢いよく漣の頬を打った。
「ぐ・・・お前の思う通りになってやる義務はないな。」
唇から血を流しながら漣がにやりと笑う。その笑みを受け、数度頷くと刹は踵を返した。
「気が変わった。君は気が狂うほどの快楽の果てに殺してやる。君の巫女と、葉霊も一緒にね。」
「何・・!?」
「どうやら彼女たちもここに入ってきたようだよ?のこのことまあ、命知らずなものだよね。ああ、でも心配しないでよ。巫女だけは僕がちゃんと可愛がってあげるからさ。」
くすくすと笑いながらソファに戻る接を凄まじい目で漣は睨みつけた。
「遙に指一本触れてみろ・・絶対お前を殺してやる!」
「口だけは威勢がいいじゃないか?今の自分の立場をその身で思い知るんだね。『やれ』」
シュルッ
「う・・ぁあっ!くそっ!『やめろ!』『やめろ』!!」
漣の言霊が引き裂いていく傍から触手が絡み、その体を捕らえていく。その様子を楽しげに見て刹はふっと笑った。
このまま抵抗しつづけても消耗するし・・・抵抗しなくても狂い死ぬと。まあ・・僕はどちらでもいいんだけどね。
そして瞳を閉じ、別の方向へと意識をめぐらす。美しい獲物たちのほうへと。

「操さん・・・。」
「何?」
不安げな声で後ろからついてくる遙に苛立った返事を返してしまう。
「ここ・・どこなんですか・・?」
遙の質問に構わず歩きつづける。
「詳しいこと説明してもわかんないでしょうから簡単に説明すると、相手の手の内よ。」
「・・なるほど。」
操にしても不安はあった。いつまでたっても問題の場所へ着かない。漣の気配はすぐ近くに感じるというのに。
漣・・・どこ・・?
薄皮一枚向こうのような感覚があるのにもかかわらず到達できない。そのことに操は苛立っていた。
・・・・試してみましょうか。
このまま歩きつづけても埒があかないと考えて、闇が蠢いていると形容するに相応しい壁へと集中する。そして。
「『開け!』」
操の言霊に呼応して闇が蠢く。薄くなる壁に期待を向けるがそこまでで。
「・・遙、ちょっと手を貸して。」
「え?」
「壁をぶち抜くのよ。」
「えええ!?」
わけもわからず焦る遙の手を取って壁のほうを向かせる。そして。
『開け!!』
遙の戸惑いがちな声と操の凛とした声が重なり、壁が蠢いた。霧が晴れるように壁が徐々に薄くなり、その向こう側が曝け出されていく。
「漣!?」
「おや、意外と早かったね?もう少しかかるかと思ったんだけど。」
二人が目にしたのは、絡みつく瘴気にとらわれてやっと顔だけが出た状態の漣と、その漣を前に薄笑いを浮べている刹の姿だった。
「は・・るか・・操・・・」
漣の瞳は輝いていたものの、それは己を保つので手一杯といったような状態に見えた。慌てて駆け寄ろうとする二人に刹はくすりと笑った。
「簡単に助けられるとは思わないで欲しいな。『捕らえよ』」
刹の言霊に呼応して周囲の瘴気が形をとる。それはまるで触手のように二人に絡みつき、捕らえた。
「な・・いや!『離して』!!」
「『離せ!』陰険なことするんじゃないわよ!!」
二人が言霊で振りほどく傍からどんどんと新たな瘴気が絡みつき、やがてその四肢はがんじがらめに捕らえられてしまう。
「心外だなあ?僕は自分の身を守ってるだけだよ?」
くすくすと笑いながら操の前に立ち、薄く唇を引き上げる。
「君は斎をこっぴどく振ったんだろ?抱かれてるときはあんなにしがみ付いてたくせにねえ?」
「な・・!?無理やり染めといて!!」
刹の言葉に操の頬がかっと赤く染まり、怒りに瞳が燃える。その操の顎をとって馬鹿にしたような笑みを刹は浮かべた。
「美人のそういう顔は好きだよ。屈服させるのもね。」
「あたしは好きじゃないわよ。」
操の反発にもにやりと笑みを浮かべてその服に手をかける。
「君の都合なんかどうでもいいのさ。」
ビリィッ
服が意外なほどの膂力によって引き裂かれ、その白い素肌が露わになる。その白い素肌を覆い尽くすように瘴気の触手が乳房や太腿に絡みついた。
「い・・やっ!『解』!!」
「せいぜい悪あがきしなよ。その結果があれだからさ。」
「ひぃ・・や・・『離せ!!』」
くすくすと笑いながら視線で触手による陵辱に苦しむ漣を指すと、悶えながら抵抗する操を尻目に隣で戒められた遙に視線を移す。
「ひ・・。」
刹の視線に射すくめられてびくりと震える遙に楽しげな、それでいて昏い笑みを浮かべるとゆっくりとその前に歩み寄る。
「離して。お願い。漣を離して!」
遙の震える声が懇願する。その懇願をふんと鼻先で笑い飛ばすとその白い頬にいかにも優しげに指を触れる。
「そうだねえ・・。君次第では考えてあげなくもないよ?」
「何?どうしたらいいの?」
「そんなの聞いちゃだめ!」
「遙・・だ・・めだ・・。」
縋るように刹を見る遙に操の苦しげながらも鋭い声が飛んだ。漣のかすかな声も聞こえる。
「煩いよ。『黙』」
叫ぶ操を封じるべく言霊を飛ばして刹は親切ごかした笑みを浮かべて遙を見る。
「君次第で漣君の命は助けてあげよう。条件を飲むかい?」
遙の視線が触手の海に埋もれそうになりながらもがく漣を見る。
「遙・・だめだ・・。聞くんじゃない・・!」
その視線を受けてほんの少し刹は触手の動きを弱めた。漣の制止の声はより遙の漣に対する愛情を刺激する。それを知ってのことだった。
「漣・・。」
「遙!だめだ・・!!俺は自分で何とかするから・・うぁっ!」
苦悶の表情が遙をより焦らせる。それは、漣が刹の手の内にいることをより印象付ける結果にしかならなかった。
何かを決心した青ざめた顔が刹のほうを見る。
「どうすれば・・いいの・・?」
「遙!だめだっ!!」
遙の視線を受けて刹はにやりと笑った。
「僕のものになりなよ。言霊に支配されるんじゃなくて、自分の意思で僕のものになるんだ。」
「そんな・・・。」
刹がそういうのと同時に遙の戒めが解かれる。
「選ぶんだ。ここで自分で全部脱いで漣君の命を助けるか、何もせずに見殺しにするかをね。」
くく・・と喉奥から漏れる低い笑いが闇に侵された空間に響く。
迷うような視線が刹を見、漣を見て自分の身体を見下ろす。再びその視線が漣に流れて・・。
「わかりました。」
「遙!!」
漣の叫びに瞳を閉じて自分の服に手をかける。
「じゃあ、脱いでくれるね?」
「遙!!だめだ!!」
聞こえる叫びの悲痛さに突き動かされるように服をゆっくりと脱いでいく。その思い切りのよさにひゅうと刹の唇から口笛が漏れた。
「葉山の。随分いいパートナーに恵まれたねえ?」
「くっそ・・・殺してやる・・。」
唇を血が滲むほどに噛み締め、刹を燃える瞳が睨みあげた。その漣にふんと軽く笑って髪を軽くかきあげる。
「女に助けられるなんていいご身分じゃないか?まあ、じっくり見てなよ。君の巫女が闇に汚されるところをね。」
漣と刹のやり取りの間に、遙の身を包むものは下着のみになってしまっていた。そこで戸惑っている遙にのんびりと声をかける。
「僕、余り気は長くないんだよね。」
「うぁうっ!」
どこかを締め付けられたか漣の声が同時にあがる。その声に遙の心は決まった。
パサ・・・
羞恥に顔を染めた遙の身体からゆっくりと下着が床に落ち、その裸身が全て晒される。その匂い立つような肢体にゆっくりと歩みより、顎を指で捕らえる。
「いい子だね。僕にキスしてくれるかい?」
悲痛な瞳が漣を捉える。今にも泣き出しそうなその視線を受けて漣は叫んだ。
「だめだ!!遙ぁ!!!」
・・・・ごめん・・・。
呟きのようなその言葉が漣に届いたかどうか。遙は伸び上がり、僅かに俯けた刹に口付けた。
「ちくしょーーーっ!!遙ーーーーっ!!」
漣の絶叫が木霊する。その叫びを聞きながら遙は唇から侵食しようとする濃厚な闇に思考をかき回されそうになっていた。ふらついた体を支えるようにその身体に刹の腕が回され、乳房を揉みしだく。
「ぁ・・。」
少し前に澱に陵辱された身体は簡単にその手から快楽を受け取る。混濁した思考ではそれを弾き返すこともできず、遙は刹の腕の中にがっくりとくずおれた。
「くく・・・葉山の。見てなよ?君の巫女は僕のものになる。そうなれば君の力なんてますます及びもつかないところになるさ。く・・くくくく・・・・・。」
そのままゆっくりと遙の身体を床に横たえ、なぞるように手を滑らせていく。
「ん・・ぁう・・・。」
遙の身体が瘴気と快楽が染み入ってほんの少し震えた。首筋から乳房、腹を辿り、茂みを滑るように撫でて足へと。それから遠慮のない舌が体を弄り始める。
「ふ・・ん・・。」
「くく・・随分節操のない身体だね?もうこんなに乳首が立ってるよ?」
「・・や・・・。いやぁ・・・。」
羞恥を感じる部分は残されている。だが、それ以上何かをしようと考えてもすぐに意識を掻き乱されてまったくその思考が形にならないのである。だからこそ刺激だけはかなりオープンに感じられて身悶えをししまう。乳首を吸われ、軽く噛まれて遙の目尻から涙が零れた。
「やぁ・・・やなのぉ・・・。」
ゆるゆると首を振ってもそれは刹を楽しませる結果にしかならない。乳房を揉みしだきながら舌が臍を擽り、茂みをゆるゆると舐める。
「ああ・・そこは・・。」
「そこは?足を開きなよ。助けたいんだろ?」
いや・・いや・・・
卑怯なと思う余裕すらない。だが、『助けたいんだろ?』という言葉はやけに鮮明に頭に滑り込んだ。
そう・・・漣を助けなきゃ・・・
ただそれだけが遙の意識を支え、体を動かしていく。
漣が何かを叫んでいるような気もするが聞こえない。遙の足が少しずつ動いて隠された秘裂を自ら露わにした。
「いい子だね?しかもこんなにいやらしく濡れて。本当は僕に抱かれるのが嬉しいんだろ?」
ぴちゃ・・・
くすくすと笑いながらその言葉どおり蜜に濡れていやらしくてかる襞を音を立てて舐めあげていく。
「ひ・・ひぐぅ・・・っ!あ・・あぁん・・いやぁ・・っ。」
拒絶の言葉はまったく意味をなさない。与えられる快楽に遙の足は自然と大きく開き、刹の舌を迎え入れていく。それをわざとのように漣に見えやすい角度で見せつけるように舐めながら刹は漣に視線を走らせる。
くくく・・・・
そのくぐもった笑いを聞いてますます漣の顔が険しさを増す。今は触手による陵辱は施してはいない。はっきりとした意識でたっぷりと漣に屈辱を与えるためだ。
くくく・・見るがいい・・。己の巫女が闇に落ちていく様をゆっくりとな・・。
漣の視線の激しさに満足感を覚えてますます巫女・・遙を悶えさせることに没頭する。遙が悶えれば悶えるほど漣は屈辱を味わうはずだった。
「は・・ん・・んぁ・・・やぁ・・。だ・・め・・おかしく・・なる・・あぁ・・。」
遙の腰が震え、刹に舐められている襞からの水音がますます増す。固くしこったクリトリスをちゅうちゅうと愛液とともに吸い、尖らせた舌で舐めながら刹は例えようもない愉悦を味わっていた。
ふふふ・・・葉山も終わりだ・・・。巫女が僕の手の中だからな・・。
「ああ・・だめ・・だめ・・・」
ますます遙の声が切羽詰っていく。ぬめる熱い膣の中に指を入れ、かき回しながら熱を込めて淫核を責め立てる。
「や・・はう・・漣・・漣・・・・あぁ・・漣・・・っ!!」
少女は達した。愛しい相手の名を叫びながら。罪に苛まれ、涙を流しながら。
「く・・くくくく・・・・。じゃあ・・もらおうかな。葉山の巫女・・。」
そそり立つ男根を露わにしながら男は笑った。自分の勝利を確信して。
「い・・や・・・・。」
そして、男は少女に覆い被さっていった。

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